その日も、いつも通り終わっていた。
見知らぬ女性が十二支高校の門に現れるまでは。
A jewel in mud
「あなたね?私の婚約者をたぶらかしたのは!」
どうにもこうにも時代錯誤だがお昼には流れてそうな言葉が、とつぜん吐かれた。
言ったのは見るからに美人だが性格の悪いお嬢様、といった風貌の女性。
多分未成年で、ここにいても不自然でない年齢なのだろうが、
目一杯作り上げられた顔が多分に不自然さをかもし出していた。
そんな女性がつかつかと現れた。
そして「あなた」と言ったのは。
野球部のマネージャーで、天国と下校中だった鳥居凪だった。
凪は何のことか全く分からず。
戸惑った顔を見せるのみだった。
彼女はこんな理不尽な状態に身を置かされる必要のない善良で清純な少女なのだから。
当然となりにいた天国は彼女をこの状況から助けるために乗り出そうとした。
しかし、その前に。
バシッ!
「きゃあ!!」
女の平手打ちが、凪の頬に飛んだ。
「凪さん!」
天国は衝撃で倒れこんだ凪の元に寄る。
かなりの強さで叩かれたようで、凪の頬は赤く腫れていた。
そして、女は気が晴れたように、勝ち誇ったように言った。
「これに懲りて人の婚約者に手を出すようなマネは…。」
バシィ!!
「きゃああ!!」
更に大きな音が、響いた。
天国だった。
「女を殴るのは趣味じゃねえが、アンタやっちゃいけないことしたな。」
仁王立ちで怒る天国に、女は怯えた。
だが、流石にプライドの高さが手伝って、言い返す。
「何言ってるのよ!!この女が悪いんじゃない!!
私の芭唐さまの心を奪って…!!」
知っている名前が目の前の女の口から出た時。
要約天国は合点がいった。
「…責任取らすか。あのバカに。」
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『はあ?!あのバカ女マジで行ったのかよ!!』
「おー。その挙句に何を勘違いしたのか凪さんに平手打ちかましやがった。
てめえ、あのアホ女にどういう説明したんだよ?」
『…そっか、そりゃ悪かった…十二支の野球部に好きな奴がいるって言っただけだったんだけどよ。』
「…勝手に選別してたのか。そりゃアホだな。」
『……悪ぃ。クソオヤジが勝手に言い出した女だったからあんまり気にしてなかったんだよな…。』
「…凪さんにはお前からじきじきに謝っとけよ。
巻き添えもいいとこだからな。」
『責任はとらせるだろ?』
「ああ、カネしか解決の仕方しらねえだろうけどな。
だったら搾り取れ。その女のオヤジの会社がタチ悪そうなら潰せそうなくらいにな。」
『く〜、そういうとこたまんねえよな、お前。
マジ愛してるぜv』
「抜かせ。」
「天国さま…お電話はおすみですか?」
悪巧みという名の電話相談を終えた天国に、執事から声がかかった。
親よりも自分の事をよく知っていてくれる、初老の男だ。
「ああ。何かあったのか?」
「はい。牛尾財閥のご令息が来られました。」
「え…?!」
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「やあ、夜分にすまないね猿野くん。」
「…キャプテン……。」
天国は呆然としていた。
今まで十二支の誰にも、この実家の事を教えてなかったのに。
…正確にはここは実家がらみの別宅だが。
「今日来たあのお嬢さん、以前会ったことがあってね。
そこから割れたんだよ。」
「どーやってですか。」
あの女に話した覚えは毛頭ないのに。
「うん、ぶっちゃけ御柳くんに口割らせた。」
(御柳…!!!)
あとでコロス、と決心を固めた。
「で、何の御用ですか?」
「うん…というかあのお嬢さんのお父さんに泣きつかれてね。
僕が代理で謝罪に。」
情報の速さに驚きながらも、天国は冷静に返す。
「……許すと思ってるんですか?」
「まさか。それは口実だよ。
是非お邪魔したくてね…君の家に。」
「……それこそどうしてですか?」
「知りたかったんだよ、君の別の一面が、ね。」
にこり、と人のよさそうな笑いを見せた。
「くどいてるんですか?オレを?財閥を?」
温度の下がった声が、牛尾の耳に届いた。
######
牛尾が帰った後、天国はソファに横になっていた。
きっと牛尾は驚いたことだろう。
この家にでなく多分自分に。
そんなこと何度かあった。
明るい学校の自分と。
そして冷ややかなもう一人の自分。
二つを使い分けるようになってから、随分と時間がたつ。
おそらく今日、うっかりと出してしまった冷ややかな面に、彼は興味を持ったのだろう。
いつもそうだった。
牛尾がそうであるとは言わない。
だが、今まで多くの人間が表と裏の差にひかれ、そしてついていけなくなり、いなくなった。
表裏のある人間、だと親も言う。
親が「他人にはにこにこ」と教えたのに。
勿論悪い意味ではなかったのだろう。
でもオレは裏と表を作れと、そうとっていた。
潔癖だから、真面目だから、頭が良いからそうなったんだろうと、フォローをいれてくれる人も居た。
でも、それでも皆辛がっていなくなった。
それに対する痛みすら、最近ではもう麻痺してきた。
そういうものだ、と思ってきた。
だけど、一人だけ。
「よ、オレをたぶらかした張本人v」
ばん、と音を立てて現れたのは御柳芭唐。
「お前…よくもバラしてくれたな。」
視線も向けずに恨み言をはく。
こいつはそれくらいじゃへこたれるはずもないのがわかってるから。
「んーじゃ、カラダで払うわv」
「死ね。」
「そういうところがたまんねって言ってるっしょ。」
いつの間にか寄ってきた御柳は、ソファに横たわる天国にキスを落とす。
「……。」
天国は表情も変えなかった。
そんな天国を見て御柳は微笑む。
「いつもそうだよな、お前は。
冷たくてゴーマンで冷静で……それでたまらなくキレイなんだよな。」
「……言ってろ…。」
「やだな、信じてくれないの?」
お前は泥の中に光るダイヤみたいに、キレイだと。
最初に会った時にこいつは言った。
「……信じさせてみろよ、できるならな。」
こいつならきっと できるから。
泥に汚れても 手に取ってくれる奴を 多分ずっと待っていたから。
end
分かるような分かったようなわけの分からないお話ですね…。
でも自分的にはかなり楽しんで書かせていただきました!
自己満足申し訳ありません!!
そしていつもいつも本当に遅くて申し訳ありませんでした!!
るか様、素敵なリクエストありがとうございました!
そして…紆余曲折あまりできてなくてすみません…!!
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